あなたが長期的に就業してもらいたい社員、もしくは外注さんを採用すると考えているとしましょう。
そして、採用活動を行い、ようやく2人から応募がありました。
事前に履歴書を見て、それぞれと話をした結果、あなたから見たAさんとBさん2人の評価は以下でした。
Aさん:スキル・パフォーマンスが高いけど、価値観が合わない人
Bさん:スキル・パフォーマンスは低いけど、価値観が合う人
図にしてみるとこうなります。
スキル・パフォーマンス
↑Aさん
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| Bさん
+ーーーーーーーーー>価値観
Aさん:スキル・パフォーマンスが高いけど、価値観が合わない人
Bさん:スキル・パフォーマンスは低いけど、価値観が合う人
さて、採用は1名と決めています。
もちろんあなたの理想は、
「スキル・パフォーマンスが高くて、価値観が合う人」
だったのですが、残念ながら両方を兼ねる人は現れておらず、2人はそれぞれ強みが違います。
あなたはどちらを選ぶでしょうか?
さて、実際に考えてみてください。
それでは、ここでそれぞれ採用した数年後の顛末を見てみましょう。
Aさんを採用した場合
Aさんを採用してから色々と紆余曲折を経て、5年ほどが経ちました。
Aさんはとても能力が高く、マネジメントらしいマネジメントはしなくても、自ら意思決定をして事業を進めてくれている状況です。
Aさんのお陰で売上が上がっているプロジェクトもあり、No.2として、なくてはならない存在になっていました。
でも、ここ数年社長の自分をあまり良く思っていないオーラが滲み出てきていて、最近特に、Aさんの部下も含めてコミュニケーションがうまく行っていません。
部下は社長の自分よりも、Aさんの言うことに忠実です。
どうも自分の意思決定にも不満があるような感じです。
本音を言えば「誰が雇っていると思っているんだ!」と内心では怒りも覚えますが、そんなことを口に出せるわけもなく、自分のカリスマ性の無さに少し落ち込んでいる日々です。
そんなある日、この経済状況の中で、今のビジネスをそのまま継続していても先細りは目に見えているので、新規事業に着手し、いずれはその事業を主軸とした方向に転換を図る計画を立てました。
そのことを No.2 のAさんも合意してくれていたと思っていたのですが、、、
ある日
「社長、申し訳ありませんが、今月付けで退職させていただきたいと思います」
との一言。
「え!?ちょっと、待ってください、なんで・・・
(略)
Aさんが退職した後、おそらくAさんが引き抜いたのでしょう。
いえ、自分の意志で行ったのだと思いますが、部下数名も退職をしていきました。
予定していた新規事業に着手するための人材もいない状況ですので、現在のビジネスをとにかく精一杯、再度軌道が乗り経営が安定するまで頑張るつもりです・・・
Bさんを採用した場合
Bさんを採用してからと言うもの、当初はスキルのなさ、パフォーマンスの低さに、手取り足取りでの教育が続きました。
特に最初の半年は、報連相を蜜にさせ、社長の自分自らチェックを行ったり、結構な時間と労力を使いました。
途中、なんのために採用したのか?本当に大丈夫かな?と不安になった時もありましたが、それでも、Bさん本人の「頑張ります!お役に立ちたいです!」という情熱と態度があったので、Bさんを信じて教育を続けてきました。
1年が過ぎた頃には、Bさんは自分自身で判断と行動をすることができるようになりましたが、その判断と行動はまさしく社長の自分と同じ判断基準と行動スピードだと気づき、とても嬉しくなりました。
また部下に対しても「社長が目指すものはこの世界なのだ」「我が社がお客様に提供したい価値はこういうものなのだ」と伝えてくれる立派なNo.2、立派なリーダーとなりました。
そんなある日、この経済状況の中で、今のビジネスをそのまま継続していても先細りは目に見えているので、新規事業に着手し、いずれはその事業を主軸とした方向に転換を図る計画を立てました。
そのことを No.2 のBさんに伝えたところ
「社長、わかりました。どの方向でも大丈夫です。一緒に進めていきましょう」
と力強く答えてくれました。
今は新規事業の立ち上げを、Bさんや部下の力を借りて、色々と苦労はあるのですが順調に進めている状況です。
スキル vs 価値観
さて、やや極端ですが、話を作ってみました。
いかがでしたでしょうか?
緊急対応のヘルプ、とにかく目の前のことをこなす即戦力だったら、スキル・パフォーマンスが高いAさんを選ぶかもしれませんが、長期的な関係性を作っていくのだとしたら僕は
Bさん:スキル・パフォーマンスは低いけど、価値観が合う人
を選ぶことをオススメします。
スキルやパフォーマンスは改善していきますが価値観はなかなか変わりませんし、無理に変えようとすることで歪が生じます。
スキル・パフォーマンスが高くて、価値観が合わない人は本当に気をつけたほうがいいです。
上記の例のように時間が経った時に、価値観のズレがより明確になり、いずれあなたの敵対者になる可能性があるからです。
No.2が部下を引き連れて会社を去っていった、、、なんて話はよく聞くストーリーですが、それは経営者とNo.2の主導権が拮抗し、かつ価値観が合わずに同じ方向を見ていなかったからこそ起きる現象です。
もちろん、スキル・パフォーマンスはある程度高いことは採用時の最低ラインとして設定する必要はあると思いますが、最大の判断材料は「価値観が合うか、どうか」だと思います。
ちなみに、僕は自社のスタッフ採用の時の判断基準は
「今のビジネス関係なく、どんなビジネスだったとしてもこの人と一緒に働きたいか?」
「プライベートも一緒に遊ぶとして、楽しく遊べそうか?」
「そして、相手もそう思ってくれそうか?」
というのが意思決定の基準としています。